私は、頭が悪い人は嫌いだ。誤解を恐れずに言うが、頭が悪いとは知能指数のことではない。そんなことを言うと読者の皆さんには嫌われるかもしれないが、仕方がない。好き嫌いとは、生きていくにはあまり関係ないことで、ほとんどの人のことは好きでも嫌いでもないのかもしれない。

皆さんは、自分の質問に対して、欲しい回答が得られず、雲に巻かれたような経験はないだろうか。そんな時、私は辻褄が合わないのでイライラする。

医者になって、学会発表なるものを初めて経験した。それと同時に、いろんな学会発表を見た。発表の後に、必ず質疑応答がある。ほとんどの場合、質問と答えが噛み合っていない。それでも、みんな神妙な顔をして頷いていたりする。難しい専門用語を使えば使うほど、辻褄が合っていないことを誤魔化しているとしか思えなかった。馬鹿らしいと思った。

そんな折、とてもスマートな先生に出会ったことがある。臨床研究に関する勉強会に行った時、参加者の質問に対して、その先生は、非常に明快に、回答していた。辻褄が合っていた。無駄なことは一切ない。そして、明確だった。感動した。頭が良い先生と言うのは存在するのだ。

開業してからは、医療者以外の多くの専門家と話すことが多くなった。経営や会計、IT、不動産、建築などいろんな専門家とやりとりする中で、私にとっては専門外のことなので、こちらは質問する立場になる。すると、同じことが起こった。私の質問に対して、専門用語を並べ立てて、もっともらしく回答してくれるが、煙に巻かれたようで、私の知りたいことに永遠にたどり着かないことがあった。相手が専門家なので、私は遠慮し、それ以上質問し追求することができなかったが、後から考えれば、相手が私の質問の意図を理解していないだけのことだった。

ところが、やはり一流のプロは、私の質問に対して、私が分かる言葉で効果的にそして必要な情報のみを伝えてくれる。そんな時に、やっぱり感動する。

それから、私は、相手の質問の意図をよく考えるようになった。日々の診療では、一人10分程度の面談の中で、患者さんの質問の意図を5分くらいで、把握し、患者さんが欲しい情報を効果的に伝える努力をしている。この感覚は、日々研ぎ澄まされており、相手の目がくぐもっている場合や、何を質問して良いのか混乱している場合も見抜けるようになった。そんな時は、結論は出さずに曖昧にしておく。または、伝える情報をグッと限定する。

多人数向けの講演会や勉強会でも、演者(特に医者)によっては、聴衆が何を求めて、どれくらい理解しているのかを全く無視して、淡々と話すため、とても分かりにくいことがある。人数が多い時ほど、会場のニーズを把握し、話す内容に優先順位を付けて、効果的に話す必要があるのだ。

つまりは、仕事上の会話は、全て、優先順位を要する。

友達との会話、家庭での会話、日々のミーティングなんかは、とりとめのない話がとても大切で、そんな中から、思わぬアイディアが湧いたりする。

しかし、カンファレンスや学会、講演会や診療、仕事上での面談は、とりとめのない話をする場所ではない。効果的な会話の方法は、日々身につけることができる。

1、自分が伝えたいことよりも、相手が何を聞きたいのかを優先する。

2、相手の理解度に応じて、話す内容に優先順位をつけ、限定する。

3、使う言葉(専門用語など)に共通理解があるかを確認し、専門用語を使う場合には、相手の理解度を確認する。

4、時間を決める

これは、相手のためのようで、自分のためである。自分が伝えたいことを効果的に伝えるために、大切なことなのだ。おそらく、マーケッターと呼ばれる人たちは、これを実践して、売りたいサービスや商品をどんどん売るのだろう。売れると言うことは、自分の価値観が世の中に貢献すると言うことだ。

私たちは、自分の創造した新たな価値観を世の中に広めて、社会貢献しようとする時、相手に自分の価値観を知ってもらう必要がある。そのためには、戦略を要するのだ。馬鹿なことはやめて、頭を使おう。